2013/08/27

ウコンの力 -- කහ​

 この8月にスリランカを訪れていたとき、コロンボのヒルトンホテル(Hilton Hotel)からレイクハウス書店(Lake House)に向かう道沿いにある、老舗の映画館リーガル(Regal)で『ニキニ・ワッサ』(Nikini Wassa, August Drizzle)を見た。

 リーガルは映画館の入り口が開閉式の門で錠がかかっており毎日夕方6時開門。6時半から10分予告編、40分上映、5分休憩、続けて65分上映で、1時間45分の映画だった。

 この映画は2013年上映で、2012年のフランス、韓国、インドの様々な国際映画祭で賞を取っている作品だ。監督はアルナ・ジャヤワルダナ(Aruna Jayawardana)。主演女優はチャンダニー・セネビラトナ(Chandani Senevirathne)。好きな役者さんだ。

 この作品は、父の死により父の経営していた葬儀屋を継いだ適齢期を過ぎた女性に関わる性と生と死と暴力の物語だ。

 特に印象深かったのは、普段仕事や生活で用いるワゴン車が死と性と生と関わる場として象徴的に描かれているシーンだ。

 遠くに見える美しい岩山をバックに広大な貯水池で沐浴を終え、帰り道を歩む主人公。ふと見ると、自分のワゴン車が茂みの陰にある。ワゴン車はきしみ、揺れ、うめき声が聞こえる。更に近づくと、部下の男が彼女とセックスをしている。その行為を目撃し、興奮する主人公。その場を立ち去り、仕事場兼自宅に戻る。遺体にエンバーミングを施す作業台に背中を向けて座る。そして横たわり、仰向けになる。



 適齢期を過ぎた女性の性的衝動、孤独、死が場と横たわるという行為を通じて露わになる。

 物語は村にもう1軒ある商売敵の葬儀屋の策略による悲劇と、そして主人公の夢だった斎場の完成による公共性を持った希望により終わる。


 さて、本来のこの文章の目的を忘れていた。

「ウコンの力」

 父の仕事である葬儀屋を受け継いだ女性が店に行った時に、店の主人に無視されて、欲しいものが買えなくその場を去った後に、店の主人が従業員に行った言葉はウコン(කහ​)をまいておけというものだ。つまり、穢れを清めろということである。日本であれば、塩をまいておけというのに相当する。

 なぜ清めにターメリックが用いられるかというと、殺菌力があるからである。シンハラ人の友人の家にいたときに、虫除けにウコンを水で溶いたものを床にまいていたことがあった。

 殺菌作用を持つウコンには、日常への侵入を防ぐ力がある。