ベストセラー小説කන්දක් සේමා『山の如し』は、男性中心主義的な社会を女性の視点から描く小説だ。
主人公ヌーパー(නූපා)は10代の頃につき合ったジャヤナータ(ජයනාථ)と肉体関係を持つ。その時に生じた関係の変化がヌーパーの視点から次のように描かれる。
ජයනාථ බලාගෙන
හිටියේ, 'හොඳ වැඩේ උඹට' කියනවා වගේ. දැන් ඉතින් උඹ සළු
වුණා. මට යටත් නේද කියන හැඟීම ඒ ඇස්වල තිබුණා. (p.20)
「ジャヤナータは私を、’とんでもないことになったな、お前’というような目で見ていた。もうこれから、どうとでもなるよ、お前。その目には、自分が下なんだという感情があった」
文中のシンハラ語の表現でසළු වුණාというのがある。これはゲームの言葉から来ている。ルール上、プレイヤーは自分の動けるゾーンが決まっているが、点数をあげればそのゾーンの制限が緩くなり、自由に動ける範囲が他の人よりも広くなる。
この概念が女性の社会生活上の領域に使われるとどうなるか。 処女であったからこそあった制約がなくなり、どこにでも自分で自由に行けるようになる。しかし、これは肯定的な意味で用いられるのではなく、否定的な意味で用いられるのである。
肉体関係を持ち、処女を失うことで境界を越え、これまでとは異なる領域に入る。処女性に価値を置く社会においては、
処女を守るように奨励され、処女である女性が守られる。ところが、処女ではなくなった女性は処女である女性よりも価値が低く見られる。肉体関係を持つ前は、相手の言いなりにはならなかったのが、持った途端に相手の言いなりになってしまう状況に置かれるのである。
肉体に生じた変化は、その人間の社会的関係を変え、更に対人関係を変えてしまう。ジャヤナータが自分を見る眼差しに自分がどういうゾーンに入ったのかを知るのである。
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