このインタビュー動画は、監督の新作映画இனி அவன்(Ini Avan)に関するもので、日本では第25回東京国際映画祭で『兵士、その後』(Him Hereafter)という邦題で2012年10月26日と28日に上映されている。
映画の題名のタミル語の意味は何であろうか。2012年9月にアメリカで逝去されたスリランカ言語学の泰斗、故W.S. カルナーティラカ(කරුණාතිලක Karunatillake)ケラニア大学名誉教授が編纂された2002年出版の1037ページ(見出し語約8万語)にもなる"දෙමළ - සිංහල අකාරාදිය(தமிழ் - சிங்கள அகராதி)"(『タミル語シンハラ語辞典』)で調べてみよう。この辞典は見出し語にタミル語が、発音表記と意味はシンハラ語で記載されている。この辞書はシンハラ語母語者とタミル語母語話者のためのもので、相互理解には必須の画期的な辞典で不滅の業績である。
まずஇனி(ini)は別々の単語として辞書に記載されている。一つは、接頭辞として、「甘い」'මිහිරි වෙනවා'という意味。もう一つは、「それで、それから、今、ここから先」'ඉතිං, මින්පසු, දැන්, වහාම, මින් එහාට'という意味を持つ語。次にஅவன்(avan)はシンハラ語では'ඔහු'という意味を表す。அவன்は3人称男性形の非尊敬形(尊敬形はஅவர் avar)である。
表現の構造が二重になっているので、この題名は二重の意味を持っている。一つ目の意味だが、接頭辞としての解釈、すなわち、接頭辞の後ろの彼という語にくっつき一語化したものとして解釈すると、「甘美な彼」、すなわち、「人生の喜びを知っている彼」という意味だろうか。もう一つの意味は、「その後の彼」。2009年5月の内戦終結後のタミル人兵士の帰還後の人生ということになろう。
動画では監督は、題名の二重の意味を説明しながら映画の主題について述べている。
"ඉනි අවන් කියන නමෙ තේරුම, ඉනි අවන් කියන නම් වචන දෙකකට, ආ, කඩලා ගත්තහම,
ආ, ඊට පස්සෙ ඔහු කියන තේරුම. ඉනි අවන් කියන, තනි චචන හැටියට ගත්තොත් එහෙම දෙමළෙන්, ඉනි අවන් කියන් එකෙ තේරුම, සුන්දර මිනිසා කියන
එක. එතකොට මේ දෙකෙන්ම, මම මේ චිත්රපටියෙ ඇතුල් නිරූපණෙ කරන්නෙ, යුද්ධෙන් පස්සෙ,
ආ, ඇති වන සමාජයෙ ඇතුලෙ, පශ්චාත් යුධ සමයේ, දෙමළ තරුනයා ටත් විය හැකි, ඉරණම, මුහුණ දෙන්න ගැටළු, ආදිය පිළිබඳව, අංශ මාත්රයක්."
‘Ini Avan’ means “Him Hereafter”. As a single word – “Iniavan”
in Tamil means “Sweet natured man”. But both meanings depict one facet of the
destiny and problems faced by the Tamil youth in society in post-war Sri Lanka.
I’ve depicted just a fraction of the problems faced by the Tamil youth.(英語字幕)
「イニアワンという言葉の意味というのは、イニアワンという言葉を二つに、えー、分けると、えー、「その後、彼」という意味です。イニアワンを一つの言葉として解釈すると、タミル語では、イニアワンという言葉は、美しい人という意味です。それで、この二つのことで、私がこの映画の中で描き出しているのは、戦後、えー、起きた、社会の中での戦後の再会において、タミル人の青年にも起こりうる運命、直面する問題などに関する断片なんです。」
私はこの映画を残念ながら見ていない。「人生の喜びを知っている彼」と訳してみたが、この訳が適切かどうなのかわからない。適切だとして、戦争を経験する前の彼が「人生の喜びを知っている彼」なのか、戦争を経験した後の彼の「人生の喜び」のことなのか。とにかく見てみたい映画である。
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