2012/07/19

アートマン、転生、命、魂 -- ආත්මය

シンハラ語の"ආත්මය"という言葉は基本的な言葉で、輪廻転生と関わる概念を表す言葉である。このシンハラ語は、サンクスリット語とヒンディー語ではアートマン(आत्मन्)という。古賀・高橋編『ヒンディー語=日本語辞典』では、自分、自己、自身、己、生命原理、自我、霊魂、生気という日本語が与えられている。また、スリランカ言語学の泰斗W.S. Karunatillake(කරුණාතිලක)編"දෙමළ - සිංහල අකාරාදිය​"(タミル語シンハラ語辞典)には、​タミル語のアーットゥマン(ஆத்துமம்)と アートゥマー(ஆத்துமா)が収録されており、前者にはආත්මය​とප්‍රාණයが、後者にはආත්මයのみシンハラ語訳がつけられている。

さて、シンハラ語の会話ではどのように使われているだろうか。テレビドラマ『マリー』මලීでの例を見て行こう。

次の例のආත්මයක්は、今世から来世に移行するポジション、来世に生まれ変わる前のポジション、一時的な場所を表している。

"මං හිතාන් උන්නෙ කුසුන්සිරි ගන්ද​බ්බ භව දී මිදිල ආත්මයක් ​ ලබලා ඇති කියලා. බලන්න ගියාහම එහෙම වෙලා නෑ."(マリー22話)
「クスンシリは死後24時間以内に来世に行くための場所を確保したかと思っていたけど、よく見てみると、そうはならなかったな」

次の例は、命を表している。
"එහෙනම් මිනිහට ලඟදිම අලුත් ආත්මයක් හම්බ වෙයි."(マリー66話)
 「それじゃ、彼はもうすぐしたら生まれ変わるよ」

次の例は、過去世を表す。
"පෙර පුරුද්ද කියලා කියන්නෙ මොකද්ද​? ආත්ම ගානක් තිස්සෙ ඉඳන් එන​ පුරුද්ද​. "(マリー122話)
「ペラ・プルッダとは何か。何世も生まれ変わりを繰り返して会得されるものです」

次の例も、過去世。今ひどい目にあっているのは過去世で犯した罪悪のせいであるという考えがある。とれる、はずれるという意味があるගැලවෙනවාという動詞と一緒に使われるのは興味深い。この世から自由になるのも大変だ。
"අපි දෙන්නාම මේ ආත්මවලින් විඳින්ඩ ඕන​."
"උක්කුවා මාව නිදහස් කරනකම් මට මේකෙන් ගැලවෙන්ඩත් නෑ." (マリー183話)
「我々二人は過去世における罪悪に耐えなければならない」
「ウックワが自由にしてくれるまで、この世から自由にはなれない」

 次の例は、魂。その人自身の中核を作るもの。精神的中核。古代の歴代シンハラ王朝は、広大な溜め池を造成する技術とそれを管理する高度な能力を持っていた。そういう意味で貯水池は、ポルトガル、オランダ、イギリスによる300年以上の植民地支配を受けたシンハラ人にとっては、象徴的な存在である。
"වැව් කියලා කියන්නෙ මහත්තයෝ, අපේ ආත්මය​." (マリー137話)
「貯水池というのは、私たちの魂です」

次の例は興味深い。シンハラ伝統医ディンギリは、真理を極めたリシ(ඍෂිවරයෙක්)の魂を持つぐらい素晴らしい人であると考えられている。本当は、罪を犯さなかったら男に生まれていたのだが、罪を犯したために女のアートマ(ගෑණි ආත්මයක්)をもらった、つまり、女に生まれてしまい、それでも病人のために働いているから、女に生まれてもその生に耐えられると言っている。つまり、男として生まれた場合、それは過去世でいいことをした結果であり、女として生まれた場合、それは過去世で悪いことをした結果であるという考えがそこにはある。
"ඩිංගිරි ගෙ ආත්මෙ ඍෂිවරයෙක්. කරගත්ත පාප කරුමයක් නිසා තමයි ඔය ගෑණි ආත්මයක් ලැබිලා තියෙන්නෙ. ඒත් මේ ආත්මෙ ලෙඩ්ඩුන්ට කරුණාවෙන් සලකලා කරගන්න පින් නිසා, ඔය ගෑණි ආත්මෙ විඳින්න​ පුලුවන්. "(マリー356話)
「ディンギリの魂はリシ(聖賢)である。犯してしまった罪悪のせいで、女に生まれ変わったけど、この世では病人のために慈悲深く働き、功徳を積んでいるから、女のアートマに耐えることができるんだ」


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