2012/07/26

盛り上がったところ、上への移動 -- ගොඩ​

今回取り上げる表現は、ගොඩである。ගොඩというのは、盛り上がったところやものを意味する単語である。シンハラ語の初級者であれば、その不定単数形のගොඩක්「たくさん」という言葉になじみがあるだろう。形容詞や副詞として具体的・抽象的なものの量や程度の多さを表すのに頻繁に使われる。

"පියරත්නට ගොඩක් සන්තෝස ඇති."『マリー』14話
「ピヤラトナはとても喜んでいるだろう」
"මට මිස්ට නිර්මාල්ත් එක්ක ගොඩක් දේවල් කතා කරන්ඩ තියෙනවා."  『マリー』43話
「ニルマールさんと話すことがたくさんあります」 
දැන් අපි ඇවිල්ලා ගොඩක් වෙලා.『マリー』50話
「ここに着いてからもうだいぶ時間が経つ」

こうしたものの量や程度の多さという意味は、盛り上がったところやものという意味から派生したものと捉えることができる。 

盛り上がったところということで、地名(例:ヌゲーゴダනුගේගොඩ​、バランゴダබලන්ගොඩ​)に使われる。​


盛り上がっているということは、一つ一つのものが積みあがった結果である。例のようにゴミが積みあがった「山」の意味でも用いられる。
"ඔය කුණු ගොඩෙ ගඳ මේ පැත්තට එනවා." 『ここはゴミ捨て禁止』10話
「そのゴミの山の悪臭がこっちにも漂ってきている」

動詞'ගැහෙනවා'と一緒に用いられると、積みあがっている、たまっているという意味になる。
"මහත්තයෝ, මේ දවස්වල ඡන්ද වැඩ ගොඩ ගැහිලා."『マリー』360話
「最近は選挙で忙しいんです」 

また、"ගොඩට එනවා/යනවා"という表現で「家に上がる」という意味を表す。スリランカの一軒家は、家の中に雨水が入らないように地面より一段高く床が作られている。家の中に入るための扉の前に作られた地面より一段高くなった空間をඉස්තෝප්පුවという。ここは客人などを迎えたりするのに用いられるバルコニーで、ここに上がるということを"ගොඩට එනවා/යනවා"という。日本語で家に上がるというのは、家の中の床より一段高くなかった場所を靴を脱いで上がるという意味なので、「上がる」という動作が同じでも、上がる場所が異なるわけである。
"ගොඩට එමු." 『マリー』329話
「バルコニーに上がって」
 "එහෙම නම් ඉතින් ගොඩට ගිහින් වාඩි වෙලාම කතා කරමු."『マリー』363話
「それじゃ、バルコニーに上がって椅子に座り話しましょう」

上の表現は、地面より上にある場所に垂直に移動するという意味を表すわけだが、次のように動詞'වෙනවා'と一緒に用いられると、盛り上がったところを上る、坂を上がるという移動の意味が表される。

"එතනින් ගොඩ වෙලා යන්ඩ."『マリー』
「そこを上って行ってください」

盛り上がったところを上がるということは、悪い状態からいい状態に変化するという意味に転用される。病人の場合、体の状態がよくなるという意味になる。
"මම නම් හිතන්නෙ නෑ, ගයාන් මහත්තයා ගොඩ වෙයි කියලා." 『空は月が好きだ』79話
「ガヤーンさんが回復するとは思わない」 


移動表現には他にも、ගොඩ​は動詞'වදිනවා'と一緒に用いられて、「立ち寄る」「訪れる」という意味を表す。
 "මං එන ගමන් ළමා නිවාසෙට ගොඩ වැදුනා." 『マリー』111話
「帰りに孤児院に立ち寄った」

更に、下から上の移動は状況がよくなるというプラスの意味になるので、様々な用法がある。
"දනුෂක, උඹ කැමති නැද්ද, ඔය ඉන්න වලෙන් ගොඩ ගිහිල්ලා, හොඳ පවුල් ජීවිතෙ ගතකරන්න​?"『マリー』188話
「ダヌシャカ、お前は今いる穴から抜け出して、幸せな結婚生活を送りたいと思わないか」

"ඉස්ථීර කරගෙන කසාදෙ කරගත්තොත් ඔන්න උඹ ගොඩ​." 『マリー』269話
「結婚の話をちゃんと決めて結婚したら、そしたら、大成功」

"මිනිහගෙ plan එක හරි ගියොත් වැඩේ ගොඩ​."『マリー』299話
「やつの計画がうまくいったら、首尾は上々だ」

"හැබැයි ඉතින් පොඩි දේශපාලන තල්ලුවක් ඕන​."
"අපි හඳ පාන්ගොඩ අංක​ල්ට කියමු."
"ඇමතිතුමාගෙ support එකක් ගත්ත නම් ඉතින් ගොඩම තමයි."『マリー』120話
「但し、政治的後押しが必要です」
「ハンダパーンゴダおじさんに言いましょう」
「大臣の助けが得られたら何の心配もないですな」

下から上への移動は、危ないところから安全な高いところへ動かすということなので、動詞'දමනවා'と一緒に用いると、助けるという意味になる。
"මේ දෙන්නම එකතු වෙලා තමයි මගේ ජීවිතෙ ගොඩ දැම්මෙ."『マリー』3話
 「この二人が一緒に僕の命を救ってくれた」

商売はうまくいく場合もあれば、うまくいかない場合もある。動詞'නවා'と一緒に用いられると、商売の上向いた状況、成功した状況が表現できる。
"Business කියන දේවල් වැටෙනවා, ආයෙ ගොඩ එනවා, ආයෙ වැටෙනවා, ගොඩ නවා. ඒව එහෙම තමයි."『マリー』334話
「ビジネスというのは下降し、また上昇して、また下降して、上昇する。そういうもんなんだ」 
"රාජරත්න, තමුසෙට ආපහු කවදාවක්වත් ගොඩ එන්ඩ බෑ." 『マリー』350話
「ラージャラトナ、二度と決して這い上がれないからな」

下にあるものが目に見えない状況を表すとしたら、それを上に引き上げるということは、隠していたものを明らかにするという意味になる。下例はそのような表現。
"එහෙම නාවොත් අර වහල තියෙන දේවල් එකින් එක මං ගොඩට ගන්නවා." 『マリー』 338話
「来なかったら、あの閉じていたものを一つずつあばていくぞ」 


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