シンハラ映画『ウッパラワンナー』(උප්පලවණ්ණා)の印象的な踊りの練習のシーン。
主人公ウプリ(උපුලි)が踊りを習っている場面で恋人のシリ(සිරි)の父親にこう言われる。
"නෑ, පොඩි නෝනා. තවම ඔබතුමියගෙ ඇඟට මේ නැටුමෙ ගැම්මෙ ආවෙ නෑ. ඔබතුමිය උඩරට මැණිකෙ
කෙනෙක් බව හැබෑව. ඒත් මේ
නැටුමෙ දී පහත රටට එන්ට වෙනවා. මේ නැටුම පත්තිනි දෙයියන් ගෙ නැටුම. පතිව්රතාවට
අධිපති දෙවි අංගනාව."
「違います。まだこの踊りのコツをつかんでいませんね。高地出身のお嬢さんであることは確かにそうですが、この踊りでは低地に来なければなりません。これはパッティニ女神の踊りです。貞操を司る女神なんです」
パッティニ女神の踊りの持つエネルギー、パワー(ගැම්ම)がウプリの体(ඇඟ)に入ってきていないと指摘する踊りの師匠。その原因がウプリが高地(උඩරට)出身のカーストの高いお嬢さん(මැණිකෙ කෙනෙක්)であること、すなわち、出自の違いによるものであることを示唆している。そして出自の違いにもかかわらず、踊りを自分のものにするためにはその違いを超えて低地(පහත
රට)に降りてこなければならないこと(動詞不定形+助動詞 -න්ට+වෙනවාはそうせざるを得ない状況を表す) を言っている。パッティニ女神が夫への貞操の象徴であることを考えても、相手に合わさなければならないのである。
スリランカの低地地方は、早くにヨーロッパ列強の植民地支配を受けたのに対して、高地地方は大英帝国の支配を受けるまで長きにわたり植民地支配を受けなかったために、高地が低地よりも上であるという意識が歴史的に存在している。
また、ウプリの父親は医者であり、カーストが上であるのに対して、恋人のシリは太鼓カーストという低カーストである。
このように二重の出自の違いが後の悲劇へとつながり、ウプリの出家へとつながっていくことの一端を告げる重要なシーンである。

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